読書録ユトリ

主に小説・漫画の感想を綴っていくブログ。

【レビュー】リアルお笑い漫画!森田まさのり「べしゃり暮らし」の感想

今回、ご紹介するのは、べしゃり暮らしである。

これは、森田まさのり先生の描いた漫画だ。
森田まさのり先生と言えば、ドラマと映画化もされた「ROOKIES」が大ヒットしたのが、記憶に新しい。ドラマは高視聴率で、映画の興行収入も良かったらしいので、見た人も多いのではないだろうか。

 

私は、もちろん「ROOKIES」も好きだったが、同作者の「ろくでなしBLUES」は、もっと好きだった。どちらも不良がメインである事は変わりないのだが、「ろくでなしBLUES」は人間ドラマといい、魅力的なキャラクターといい、随所にちりばめられた笑いといい、一気に全巻読破してしまったぐらい、のめり込んだものである。

 

森田まさのり先生は、その頃から、お笑いのセンスはあるなぁと感じていたし、作者コメンとの中でも、ダウンタウン松本人志さんの事を大尊敬しており、いつか「お笑い」を題材にした漫画を描きたいという旨の事も述べていた。

 

それで、「ROOKIES」の次に描いたのが、この「べしゃり暮らし」という漫画なのである。
私は、幼少の頃から、お笑いが好きで、劇場に足を運ぶ事も多かったのだが、そんな私にはピッタリの漫画だった。

 

べしゃり暮らし」のあらすじなど

ウケるためなら命がけ!? 吉竹高校3年の上妻圭右は、自称“学園の爆笑王”。その才能は、昼の放送でいかんなく発揮される! だが、ある日大阪から転校してきた元芸人・辻本潤の出現で、圭右大ピンチに!?(背表紙より引用)

 

笑いの為なら、どんな事でもする上妻圭右が主人公。
ウケる為なら、自分の身体がどうなろうがお構いなしに、何でもやってしまう性格。学校の人気者で、昼の放送では、その喋りの才能を発揮していた。そんな上妻圭右の元に、辻本という元芸人が転校してきた事から物語は始まる。

 

これは最初は、少年ジャンプで連載していたのだが、色々と都合があり、ヤングジャンプに移籍されたという経緯がある。その少年ジャンプで掲載されていたのは、「高校生編」で、ヤングジャンプに移籍してからは、「養成所編」といった風になっている。

 

個人的には、その養成所に入ってからの方が、格段に面白かった。
「お笑い」の道を選ぶという事の厳しさや葛藤が、リアルに描かれている。相方とはなんなのか、人を笑わせるとはどういう事なのか、といったものが活き活きと表現されているのである。

 

あと、主人公の上妻圭右の家族のエピソードは泣けるのである。
頑固な父親が「芸人」という職業を徹底的に嫌っているせいで、プロとして芸人を目指す事が考えてこれなかった上妻圭右。実は、母親が亡くなっているのだが、それも「芸人」が絡んでいたという事実があるせいだ。だが、そういった親子のギクシャクとした関係も、話が進んでいくにつれ、解決していき、感動的な感じになっている。

 

さらに、先輩芸人として登場する、「デジタルきんぎょ」のコンビ愛というのが、また泣かせるのである。もう実際、私は泣いてしまったぐらいである。森田まさのり先生は、こういう話を描くのが、本当に上手すぎる。賛否両論があったが、私はこの展開もありだと思った。

 

登場するキャラのそれぞれに、生い立ちや背負っているものがある。
芸人として芽が出た者もいれば、自身の才能に見切りをつけて、その道を諦めてしまった者もいる。それでも、自分なりの生き方を見つけて頑張っていく。そういった人間ドラマが、この「べしゃり暮らし」には詰まっているのである。

 

人を笑わせるのは簡単じゃないけど、だからこそ「芸人」というのは、魅力的な職業だと思う。今まで、お笑いを題材にした漫画というのは、ほとんどなかったと思うが、「べしゃり暮らし」は、森田まさのり先生だからこそ描けたリアルなお笑い漫画だろう。

 

最後に

お笑いが好きな人にはオススメだ。
森田まさのり先生もかなり取材されたのか、やはり養成所の内部というか、芸人同士の雰囲気など、かなり現実味があるし、お笑い好きの者からしたら、面白いと感じるハズだ。全19巻のお笑い漫画。ぜひ読んでみてください。終わり。