読書録ユトリ

主に小説・漫画の感想を綴っていくブログ。

【レビュー】銀行ものだけじゃない!池井戸潤「七つの会議」の感想

 

今回、ご紹介するのは、「七つの会議」である。

 

作者は、あの有名な池井戸潤さん。
池井戸潤さんといえば、あの高視聴率ドラマ「半沢直樹」の原作である「オレたちバブル入行組」を書かれた方である。最終話の視聴率は、40%を越え、更にそのドラマの中で使われていた「倍返し」という台詞は、その年の流行語大賞にも選ばれるほど、社会現象となった作品だ。

 

池井戸潤さんは、慶應義塾大学を卒業した秀才で、卒業後は三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行したというエリートだ。小説家として活躍するようになってからは、銀行に関しての扱った作品を中心に手がけるようになり、その完成度から、一気にその名が知れ渡る事になる。

 

銀行ものを書かせたら右に出る者はいないだろう。
なぜなら、「銀行で勤務していた」過去を持つ、異例の作家さんだからである。もともとの頭脳に加え、経験を蓄積した池井戸さんの表現力は、リアリティがあり、圧巻なのだ。

 

ただし、今回ご紹介する「七つの会議」という小説は、銀行を扱った作品ではない。
どこにでもあるような「中堅メーカー」を舞台に繰り広げられる物語なのである。これがまた非常に面白かったので、その魅力について語りたいと思う。

 

「七つの会議」の魅力

きっかけはパワハラだった!トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして役員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。(背表紙より引用)

 

この小説には、8篇の話が収められている。
いわゆるオムニバス形式であり、「東京建電」という中堅メーカーを中心に巻き起こる騒動を、色んな視点から見る、という形である。

 

1篇目で、営業部のエースである男が、なぜか歳上の部下からパワハラで訴えられた事から、この物語は動き出す。
まず何より、1ページ目からリアリティが凄いのである。営業部の会議の様子が書かれているのだが、それがやたらと生々しいのだ。私は、会社員時代は、もともと営業部にいたのだが、その時の苦い思い出がフラッシュバックしてしまうほど、その描写は共感してしまった。

 

この「七つの会議」という小説は、大雑把にいうと、第1篇目の「パワハラ」という少しの亀裂から、組織が決壊するまでの、流れが描かれている。1つの事実が明らかになると、また新事実が浮き彫りになり、そうやって大きな事件が、前面化される。泥沼に引きずり込まれるかのように、ズルズルと、状況は悪化していくのだが、得体のしれない不気味さが、この小説には存在するのである。

 

組織として生きるという事は?、仕事とは何なのか?、そういった我々が普段抱いている漠然とした不安が、この小説には詰まっている。

 

最後に

企業で働いている人は、間違いなく共感するのではないかと思う。
半沢直樹」シリーズも非常に面白くて、ベストセラーになるのも確かに納得なのだが、「七つの会議」も個人的にはオススメしたい。池井戸潤さんの小説家としての幅広さと才能をみせつけてくれる大作なのである。仕事に疲れている方は、息抜きに読んでみてはどうでしょうか。終わり。

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