読書録ユトリ

主に小説・漫画の感想を綴っていくブログ。

【レビュー】古谷実の最高傑作!「ヒミズ」の魅力

今回、ご紹介するのは、ヒミズである。

 

作者は古谷実さん。
古谷実さんと言えば、「行け!稲中卓球部」が最も有名かも知れない。古谷実さんのデビュー作にして、代表作といっても過言ではない作品だ。そのぶっ飛んだストーリーと魅力あるキャラクターが人気を博し、当作品はアニメ化までされている。

 

デビュー後は、「僕といっしょ」「グリーンヒル」などのように、ギャグ漫画路線を歩んでいたイメージが強かったのだが、そのイメージを払拭したのが、今回ご紹介する「ヒミズ」である。

 

ヒミズ」のあらすじや感想

人生って、とんでもねえぇぇぇ――!! 超極端な不幸に巻き込まれずに生きる、ズーズーしき「普通の人間」たち。そんな彼らに憧(あこが)れつつも、激しい憎しみを抑えきれない中3男子・住田。彼の悩みは、「自分にしか見えないバケモノ」にとりつかれていることだった……。メガヒットGAG大作『行け!稲中卓球部』から一貫して、「人生とは何か?」というテーマを問うてきた漫画家・古谷実。その魂をつぎ込んで描き出される、圧倒的な「絶望の世界」!!(背表紙より引用)

 

ヒミズは、2001年から2002年に週刊ヤングマガジンにて連載。
これまでの作品と異なり、完全にギャグの要素を排除し、シリアスな漫画に仕上がっている。「行け!稲中卓球部」を描いた作者とは思えない程、凄惨で暗澹たる物語だ。

 

これは、漫画好きが選ぶ「うつ漫画」の上位に必ずランクインする。
読んでハッピーになる事はなく、かなり気分が落ちる事は間違いない。人間のドロドロした部分が詰まっていて、「人生とは何か?」という疑問を追求したような漫画になっている。

 

主人公の住田は中学生。
ただ普通の人生を送る事を目標としている青年だ。しかし、住田のそういった思惑とは別に、彼の父親は蒸発して借金まみれの状況で、母親も中年男と駆け落ちして、捨てられてしまうハメに。

まさに不遇の現実に諦念した住田は、衝動的に、フラっと戻ってきた父親を殺してしまう。


ただただ平凡に生きる事を望んで頑張っていた住田が、ついに道を踏み外してしまうのだ。それからは、普通の人生を送る事を諦め、「おまけ人生」と称して、悪い奴を殺そうと、街を徘徊するようになる….。

 

私はまさに主人公の住田のような気持ちになった事がある。
自分の存在意義が見いだせずに、自暴自棄になった事があるのだ。その時は、同じように、死にたいと思ったし、最後ぐらい人の役に立ちたいと、かなり危険な思考に陥っていた事もある。だから、この住田には共感してしまった。

 

ラストのオチも含めて、住田は悪かったのか。
それは誰も分からない事だと思う。彼の周りには、馬鹿だけど根は良い奴の「夜野正造」や、住田を常に気にかけていた「茶沢さん」など、住田を心配してくれていた人は少なからずいた。それをどう捉えるかで、物語のオチは変わってきたのだろうと思う。

 

ただ、私は賛否両論あるラストも含めて、本当にこの「ヒミズ」が大好きである。古谷実さんの漫画で1番好きだ。人間の本質を突いたような作品は、本当に面白い。

 

最後に

この漫画は、非常に暗い話だが、映画化もされた話題作なので、一度は読んで欲しいなと思う。個人的には、住田と同世代である中学生や高校生に、この作品は読んでもらいたい。終わり。