読書録ユトリ

主に小説・漫画の感想を綴っていくブログ。

【レビュー】恒川光太郎「夜市」の世界観が素晴らしい件

今回、ご紹介するのは、「夜市」である。

 

ホラー小説に詳しい方は、おそらくご存知だろう。
日本ホラー小説大賞を受賞した「夜市」という小説だが、作者である「恒川光太郎」さんは、その独特の世界観に定評があり、根強いファンが多い。

 

私もこの「夜市」を読んで、恒川光太郎作品にどっぷりハマってしまったタイプである。ここ最近読んだ小説家の中でオススメは?と聞かれたら、間違いなくこの恒川光太郎さんの名を挙げる。それほど、インパクトが強くて、面白かった。「夜市」を読んでどハマリした私は、すぐに恒川光太郎さんの作品をほとんど購入して、読破してしまったほどだ。という訳で、大ファンの私から、「夜市」の魅力を語らしてもらいたい。

 

「夜市」の魅力

妖怪たちが様々な品物を売る不思議な市場「夜市」。ここでは望むものが何でも手に入る。小学生の時に夜市に迷い込んだ裕司は、自分の弟と引き換えに「野球の才能」を買った。野球部のヒーローとして成長した裕司だったが、弟を売ったことに罪悪感を抱き続けてきた。そして今夜、弟を買い戻すため、裕司は再び夜市を訪れた―。奇跡的な美しさに満ちた感動のエンディング!魂を揺さぶる、日本ホラー小説大賞受賞作。(背表紙より引用)

 

この「夜市」は、日本ホラー小説大賞を受賞しているのだが、その期待に違わず、素晴らしいクオリティなのである。


上記の通り、あらすじは、まさに世にも奇妙な物語。日常に潜むホラーというか、ありそうで怖い、リアリティのあるストーリーだ。これは、他の恒川光太郎作品をご覧になれば分かるが、こういった世界観のアイディアを生み出す事に、この作者の右に出るものはいないんじゃないかと思う。それほど卓越した創造性がある。


文体も読みやすい為、どんどんとテンポよく、その世界観に引き込まれていく。いや、これはもうお世辞抜きで、本気で尊敬するぐらいなのである。めちゃくちゃ面白いのである。

 

裕司と呼ばれる主人公が、「夜市」と呼ばれる不思議な場所へ訪れる事から始まる物語。これが、二転三転していき、次々と伏線が回収されて言って、最後は少し切なくて寂しくなる展開が待っている。あまりネタバレはしたくないので控えるが、短編という形の中で、思いっきり魅力がギュッと詰まっているのである。

 

また、同小説には、「風の古道」という短編も収録されている。
これは、漫画家もされているのだが、個人的には、「夜市」に匹敵する面白さだった。

 

これは、「古道」という不思議な場所に迷い込んだ少年の話。
人間が立ち入るべき場所ではない異世界の怖さや不気味さ、幻想的な風景、とにかくその情景が鮮やかに描かれていて、ついつい引き込まれる魅力があった。この「風の古道」では、「レン」という謎の青年も出てくるのだが、恒川光太郎さんは、魅力あるキャラクターを書くのが上手いと思う。不快なキャラクターがいないし、どのキャラにも感情移入ができる。短編という形の中で、それぞれの生い立ちが分かるようになっているし、やはり恒川光太郎さんの技法は凄いなと思った。

 

最後に

世にも奇妙な物語が読みたい方には、特にオススメしたい。
どハマリした自分としては、とにかくまずは騙されたと思って読んで頂きたいと思います。終わり。